不妊の原因となる性感染症
ブログ 2018年08月28日
近年、特に若い女性において性感染症の報告が全国的に増えています。
実は、性感染症の中には不妊症の原因となってしまうものがいくつかあります。
初期感染がわかりずらい感染症もありますが、おりものや月経、下腹部痛や陰部のかゆみなどなにかおかしいなと感じた場合にはすぐにかかりつけの婦人科へご相談下さい。
クラミジア感染症
日本で最も多い性感染症であり特に若い女性患者が急増しているという報告があります。
主な症状は
・さらさらとしたおりものの増加
・不正出血
・下腹部痛
などがあげられますが症状が軽く自覚症状を認めない事が多いため感染が長期化してしまいます。
クラミジアに感染後は子宮頚管炎に始まり、子宮内膜炎→卵管炎・卵巣炎→骨盤腹膜炎と上行性に感染が進行していきます。
感染に気付づかす炎症が進んでしまうと骨盤腹膜炎よりさらに上行し肝周囲炎までもきたしてしまいます。
不妊や異所性妊娠、妊婦検診、激しい上腹部痛などで判明することもあります。
確定診断は抗原検査法としての遺伝子診断によって行われ、クラミジアに感染していた場合は抗生剤を使用し治療を行います。
治療方法があるのに、なぜ、クラミジア感染は不妊の原因となってしまうのか。
先ほどお話しましたがクラミジアは上行性に感染が進んでいきます。
感染が分かり治療できれはいいのですが自覚症状が乏しく長期化しやすくなります。
その際、卵管炎が長期化すると繰り返す炎症により卵管の内腔や卵管周囲に癒着が起こります。
この癒着がおこってしまうと卵管狭窄や卵管閉塞などの卵子・精子の通過障害がおこり受精ができません。
また卵管内腔の上皮細胞に感染し炎症がおきると受精卵を子宮内に送る機能が低下し卵管内で着床(子宮外妊娠)してしまいます。
このようなことからクラミジア感染症は不妊原因の1つと言われています。
予防にはコンドームの使用、感染が疑われる相手との性的交渉を避ける、
男女間でお互いに感染してしまうので自身が感染してしまった場合は両者の治療が必須となります。
また、妊婦検診でクラミジア感染が判明することがあります。
妊婦中に感染してしまった場合産道感染により新生児に感染し、新生児肺炎や新生児結膜炎をきたします。
まれに絨毛膜半膜炎を誘発し流産、早産の原因となることがあります。
妊婦の感染も十分に注意しましょう。
梅毒
ここ数年、性感染症である「 梅毒 」の患者数が急増しています。
梅毒と診断すると医師が国に報告をすることが義務付けられており、2011年ごろまでは男女合わせて800人弱でしたが2013年には1000人代、2017年には5820人を記録し、今もなお増え続けています。
歴史をたどっていくと、15世紀頃から拡散し、かつては死に至る性感染症と言われ恐れられていました。しかし、20世紀にペニシリンが登場したことで重症化する恐れはなくなり注目から外れることとなります。
「 梅毒 」とは、梅毒トレポネーマという細菌が原因とされています。
感染力が強く口の周りをケガしているとキスだけでも感染することがあります。また感染者に出てくる発疹が触れる事で感染してしまう事例もあるので完全に妨ぎきれる病気ではありません。
感染するとおおきく4段階で症状がでてきます。
1期(感染から3週間以降)
感染した箇所にできものや赤くてかたいしこりおようなものができます。しかし、痛みやかゆみなどの症状がなく1ヶ月程度で消失してきます。リンパの腫れなどもありますが気付かない場合が多いです。
2期(感染から3ヶ月以降)
感染から3ヶ月ほどたつと感染した部分だけでなく血液やリンパの流れに乗って体全体に症状が出るようになります。特徴的な症状ちしてはバラ疹とよばれる痛みのない赤い発疹が首や背中、お腹、胸、首、顔などに出てきます。
また、梅毒性丘疹では盛り上がったぶつぶつ、角質が厚い為触ると固いものがでていたりもします。そのほかには扁平コンジローマ、脱毛、髄膜炎や腎炎、全身の倦怠感など自身でも気づくような症状がでてきます。
3期(感染から3年~10年)
ゴム種とよばれるゴムの様な腫瘍が特徴的です。
その他には、皮膚の大きな潰瘍、血管の炎症、神経にも影響を与えます。
4期(感染から10年~25年)
梅毒の末期になると歩行障害、大動脈瘤、重い脳障害などが発生します。
現在では適切に治療が行われているためここまで症状がすすむことはほぼありませんがいずれにせよ早期発見・早期治療が非常に大切となってきます。
また、梅毒は先天性梅毒と後天性梅毒があり先天性梅毒では胎児が胎盤を通して感染してしまうケースもあります。
感染グラフをみてみるとこれから妊娠・出産をしていくであろう20代女性の患者が多くなっています。
梅毒に感染すると子宮や卵巣までに炎症が起こってしまいます。不妊や月経異常の原因にもなりかねます。
自分を守れるよう意識してみてください。
淋菌
淋菌感染症は淋菌による細菌感染で性感染症として起こります。
おりものの増加、陰部のかゆみ、排尿痛、発熱、下腹部痛などの症状から淋病の感染を疑います。
個人差がありますが、症状は軽度であり無症状で経過する事もありますが、クラミジアと比べ
淋菌感染症の方が症状がでやすい為感染は拡大しにくく、罹患率も低くなっています。
女性は性行為の低年齢化の影響もあってか、淋菌感染症・クラミジアとともに10代前半から増加し始め
妊娠を希望しはじめる20代で罹患率は最高となります。
淋菌感染症にかかると子宮頚部の粘膜に感染し、菌が増殖、このため免疫反応が起きやすくなり炎症がおきます。
これが長期間放置されてしまうと不妊の原因となってしまうのです。
淋菌感染症は誰にでもおこりうる感染症であり、妊婦さんがかかると産道感染で新生児に結膜炎がおこてしまいます。
(抗菌薬の予防点眼でほとんどみられなくなりました)
おりものや下腹部痛、陰部のかゆみなど普段と違うと感じた時にはすぐにかかりつけの婦人科に相談へ行きましょう。